平洲塾212 平洲先生の遺志を引き継いで

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ページ番号1008389  更新日 2024年4月15日

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嚶鳴〈おうめい〉協議会教育長意見交換会でのメッセージ(6)

令和5年(2023年)4月21日(金曜日)に、オンラインで開催された嚶鳴協議会教育長意見交換会でのメッセージを6回にわけて掲載します。

 平洲先生の目指したもの

 細井平洲先生の両国橋での辻講釈から始めて、孟子や孔子のお話、終戦直後の私の経験と色々なお話をしてきました。そして、先回は、尾張藩九代藩主徳川宗睦が、人見弥右衛門や平洲先生と一緒に行なった「中京の文教改革」のお話をしました。
 中京の文教改革に臨んで、平洲先生は、藩主の侍講や尾張藩校・明倫堂の学長をつとめるだけでなく、廻村講話といって、自分から村々に出かけて、町民や農民に直接話しかけました。上杉鷹山の賓師〈ひんし〉として米沢に招かれた時も、人々に直接講話をしましたし、江戸では両国橋のたもとに立って辻講釈も行ないました。
 細井平洲先生には、一つの問題意識がありました。
 それは、両国橋に集まってくる江戸っ子や、各地で生活する町人、農民たちは「大衆」の域を脱していないということでした。
 「大衆」というのは、自分の意見形成能力を持たない人々のことを言います。世の中の動きに付和雷同して生きている人々です。
 平洲先生は、このような人たちを「公衆」のレベルにまで引き上げることが大切だと考えました。公衆というのは、世の中で起こる色んな問題について、情報を集め、分析し、自分なりの意見を持つ人。そして、その意見を、たくさんの人と意見交換、討論を行なって解決策を見いだすことのできる人の事をいいます。一言でいえば、世の中に起こる問題を自分の問題としてとらえ、考え、解決策を討論できる人のことです。
 そのために、平洲先生は、自分が学んだ学問を誰にでもわかるように、身近な事例を交えながら、辻講釈や廻村講話で、楽しく分かりすく、かみ砕いて説いていきました。また、全国各地の素晴らしい心と行ないで生きた人たちの話を集めて、事例として紹介しました。
 その努力は、成果を収めたと思います。平洲先生の話を聞いた人々は、涙を流して感激し、その日から生活を改めたと言われます。
 

「大衆」の「公衆化」を目指して

 はっきりいって、平洲先生の問題意識は、現在でもそのままあてはまる、と私は思っています。
 先年の東京オリンピックの直前に、建築家の隈研吾さんが町にトイレを作りました。その時、「自分は、"公衆トイレ"を作ったのであって、"大衆トイレ"を引き渡したのでない」と言いました。私は、はっきり言ってくれたなぁと、感動したことを覚えています。
 今の日本では、大衆と公衆の区別があいまいで、まだまだ、成熟した社会にはなっていないと私は考えています。
 そこで、今、東海市や嚶鳴協議会に加盟する市町にお願いしたいのは、「中京の文教改革」で大衆の公衆化を目指した平洲先生にならって、共に手を携えて、次代を担う子どもたちのために、「大衆」ではなく「公衆」を作る心の教育を行なっていただきたいということです。
 平洲先生がよりどころとしたのは、孔子の『大学』の教え、すなわち、「修身」「斉家」「治国」「平天下」でしたが、この四項目は、現在でも十分に通用する重要な道しるべだと思っています。
 ですから、

 修身=自分の自治
 斉家=家庭・家族の自治
 治国=地域の自治
 平天下=国の自治

 この四項目を道しるべとして、大人も子どもも一緒になって、心づくり、心の教育を行なっていただきたい。そのことによって「中京の文教改革」を行ない、日本中の、いや世界中の地域社会にも参考になる事例を提供いただきたいと切に願っています。 (おわり)

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