がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことでがんによる死亡を減少させることです。がん検診を正しく受けるためには、「がん検診を正しく知る」ことが必要です。正しい知識を持ってがん検診を受診しましょう。
○胃がん検診について
胃がんは、50歳代以降に罹患する人が多く、わが国のがんによる死亡原因の多くを占めるがんです。市で実施している「胃部X線検査(バリウム検査)」は、胃がんの死亡率を減少させることが科学的に認められている検診方法です。
定期的(年に1度)に受診することが推奨されています。なお、胃の痛み、不快感、食欲不振、食事がつかえる等の自覚症状がある場合は胃がん検診ではなく、すぐに医療機関を受診してください。
また、検査の結果で「要精密検査(異常あり)」となった場合は、必ず精密検査を受けてください。胃がん検診後の精密検査は、胃内視鏡検査を行い、精密検査で疑わしい部位が見つかれば、生検(組織を採取する)を行い、組織診(悪性かどうかを調べる検査)を行います。
○大腸がん検診
大腸がんは、罹患する人が増加しており、わが国のがんによる死亡原因の多くを占めています。市で実施している「便潜血検査」は2日分の便を採取し、便に混じった血液を検出する検査で、大腸がんの死亡率を減少させることが科学的に認められている検診方法です。
定期的(年に1度)に受診することが推奨されています。なお、血便、腹痛、便の性状や回数が変化した等の症状がある場合は大腸がん検診ではなく、すぐに医療機関を受診してください。
また、検査の結果で「要精密検査(異常あり)」となった場合は、必ず精密検査を受けてください。大腸がん検診後の精密検査は、全大腸内視鏡検査、大腸内視鏡検査と大腸のX線検査の併用法(全大腸内視鏡検査が困難時)、もしくは大腸CT検胃内視鏡検査を行います。(便潜血検査の再検査は精密検査ではありません。)
○子宮頸がん検診
子宮頸がんに罹患する人は、わが国の女性のがんの中でも比較的多く、また20~40歳代の女性で近年増加傾向にあります。市で実施している「細胞診」は、子宮頸部(子宮の入り口)を先にブラシのついた専用の器具で擦って細胞を採り、異常な細胞を顕微鏡で調べる検査で、子宮頚がんの死亡率を減少させることが科学的に認められている検診方法です。
定期的(2年に1度)に検診を受診することが推奨されています。なお、月経(生理)以外に出血がある、閉経したのに出血がある等の不正出血がある場合や、月経が不規則等の症状がある場合は子宮頚がん検診ではなく、すぐに医療機関を受診してください。
また、検査の結果で「要精密検査(異常あり)」となった場合は、必ず精密検査を受けてください。子宮頸がん検診後の精密検査は、コルポスコープ下の組織診(腟拡大鏡を使って子宮頸部を詳しく診る検査)、HPV検査(HPVに感染しているかどうかを調べる検査)等を組み合わせて行います。
○乳がん検診
乳がんは、わが国の女性のがんの中で罹患する人が多く、死亡原因の上位に位置するがんです。市で実施している「マンモグラフィ検査」は、乳房を片方ずつプラスチックの板で挟んで撮影することで、小さいしこりや石灰化を見つける検査で、乳がんの死亡率を減少させることが科学的に認められている検診方法です。
定期的(2年に1度)に検診を受診することが推奨されています。しこり、乳房のひきつれ、乳頭から血性の液が出る、乳頭の湿疹やただれ等の気になる症状がある場合には乳がん検診ではなく、すぐに医療機関を受診してください。
また、検査の結果で「要精密検査(異常あり)」となった場合は、必ず精密検査を受けてください。乳がん検診後の精密検査は、マンモグラフィの追加撮影、超音波検査(疑わしい部位を詳しく観察する検査)、細胞診、組織診(疑わしい部位に針を刺して細胞や組織を採取する検査)等で、これらを組み合わせて行います。
○肺がん検診
肺がんはわが国のがんによる死亡原因の多くを占めるがんです。市で実施している「胸部X線検査」及び「喀痰細胞診(喫煙者のみ)」は、肺がんの死亡率を減少させることが科学的に認められている検診方法です。
定期的(年に1度)に受診することが推奨されています。なお、血痰、長引く咳、胸痛、声のかれ、息切れ等の症状がある場合は肺がん検診ではなく、すぐに医療機関を受診してください。
また、検査の結果で「要精密検査(異常あり)」となった場合は、必ず精密検査を受けてください。肺がん検診後の精密検査は、胸部CT検査(X線を使って病変が疑われた部位の断面図を撮影する検査)、もしくは気管支鏡検査(気管支鏡を口や鼻から気管支に挿入して病変が疑われた部分を直接観察する検査)です。
なお、たばこを吸う人は肺がんで死亡するリスクが、たばこを吸わない人に比べて、日本人男性では約5倍、女性では約4倍高くなり、たばこを吸う年数、本数が多いほど肺がんになりやすくなり、たばこは喫煙者本人のみならず、周りの人(受動喫煙者)の肺がんリスクも上げます。禁煙によってご自身と周りの人の肺がんリスクを下げることができます。
<がん検診の利益(メリット)、不利益(デメリット)>
1 がん検診の利益
がん検診の最大の利益は、早期発見、早期治療による救命です。症状が出てから受診した場合、がん検診と比べ、がんが進行していることが多くあります。一方、がん検診は症状のない健常者を対象にしていることから、早いうちにがんを発見できます。
がん検診を受けて「異常なし」と判定された場合に安心を得ることができるのも利益のひとつです。
2 がん検診の不利益
(1) がん検診でがんが100%見つかるわけではありません
健常者を対象とした場合、100%がんを発見できる検査はありません。検出の限界よりも小さながんは検査で発見することができない等、検査そのものの限界もあります。このため、ある程度の見逃しは、どのような検診であっても起こります。
(2) 結果的に不必要な検査や治療を招く可能性があります
受診時の年齢が高い場合や、進行のゆっくりしたがんに対して特に精度の高い検診を行った場合、症状が出ず死に至らないがんを発見することがあり、これを「過剰診断」といいます。がんと診断された場合、過剰診断のがんと普通のがんを区別することはできないため、不必要な検査や治療を行ってしまう場合があります。
また、がんではないのにがんの疑いがあると判定されることがあり、これを検診での「偽陽性」といいます。100%の精度のがん検診はないため、「偽陽性」はある程度起こり得ます。
(3) 検査に伴う偶発症の問題
偶発症としては、胃の内視鏡検査では出血や穿孔せんこう(胃壁に穴を開けること)を起こすもの等があり、極めてまれですが、死亡に至ることがあります。またX線検査などによる放射線被ばくによりがんの誘発や遺伝的影響は、極めて低い確率ではありますが、否定することはできません。これらについては、検査を行う医師の技術向上や機器の改善等によってその影響を最小限に抑えられるようになっています。
(4) 受診者の心理的影響
がん検診を受ける場合、多かれ少なかれ心理的な負担があります。検診によって「要精密検査(異常あり)」とされた場合、精密検査を受診する必要があり、検査の結果が出るまで精神的な負担がかかてしまいます。
<精密検査の結果について>
各がん検診において、「要精密検査(異常あり)」となった場合は、必ず精密検査を受診してください。
また、受診結果については、一次検診結果に同封されている「診療依頼書(兼精密検査結果報告)」で市に報告するようにしてください。なお、精密検査結果については、個人情報保護法の除外事項として認められているため、個人の同意がなくても市や検査機関(医療機関)へ提供できることとなっています。
※ 詳しくは、国立がん研究センターがん対策情報ホームページ【がん情報サービス】(下記URL)から閲覧できます。
https://ganjoho.jp/med_pro/pre_scr/screening/index.html(外部リンク)