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ページ番号1008225  更新日 2024年3月23日

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嚶鳴〈おうめい〉協議会教育長意見交換会でのメッセージ(3)

令和5年(2023年)4月21日(金曜日)に、オンラインで開催された嚶鳴協議会教育長意見交換会でのメッセージを6回にわけて掲載します。

 残念だったこと

 もう80年近くも前のことですが、戦争が終わって復員してきた時、私が遭遇したのはGHQ(連合国総司令部)、マッカーサー率いる日本占領軍の中央本部が指導する日本でした。本部は、東京の日比谷公園近くの第一生命のビルを撤収しておかれていました。今は建て直されていますが、マッカーサーの執務室はそのまま保存されています。
 GHQは、色んな施策を打ち出しましたが、その中で大きなことの一つは、地租改正でした。大地主から土地を取り上げて、小作人に分け与えたという革命に近い措置でしたが、これと並行して、「民主主義に反するから」ということで、学校現場に指針を出しました。各公立学校の庭に置かれていた「奉安殿」を取壊し、そこに収められていた「教育勅語」を廃止するということです。
 「朕〈ちん〉思うに~」で始まる教育勅語は、天皇が、「私が考えるには」と、天皇が考える教育のあり方を説明したものです。戦前の学校では、物日(年中行事の日)や式典・行事があるごとに、校長先生が奉安殿から恭しく取り出して生徒たちの前で読みました。そういうことは、封建思想の子供に対する教えであり、軍国主義に通じるからよろしくないと、占領軍は言ったのです。その方針が出されると同時に、公立学校の小中学校、高等学校は実際に奉安殿が叩きこわされ、教育勅語そのものも廃棄されてしまいました。
 しかし、これは、今になって考えると、大変残念なことだったと私は思っています。
 というのは、GHQの指針で奉安殿を取り壊すのはいいとしても、ついでに戦前のほとんどの学校に建っていた二宮金次郎の銅像まで取り壊してしまかったからです。
 この銅像は、薪を背負って歩きながら本を読む二宮金次郎の姿を表したものです。手にしている本は、孔子の教えを要領よくまとめて人間の心の在り方を四つの指標として説いた『大学』という本で、孟子の「忍びざるの心」原典ともなっている本です。
 この本が、奉安殿や教育勅語、二宮金次郎の銅像と一緒に、「封建時代に通じ、軍国主義に導く書」として、否定され無視されることになってしまったわけです。

 

修身・斉家・治国・平天下

 その『大学』で説かれているのは、修身・斉家・治国・平天下ということです。

 ・最初は、「修身」。身を収めるということ。
 ・次が、「斉家」。家を整えるということ。
 ・三番目が、「治国」。国を治める。これは、現在でいえば、地域、地方自治の問題です。
 ・四番目が、「平天下」。日本国を平和に経営していく。平和に独立させるとこうと。

 ということです。
 私はある頃から、この「修身」「斉家」「治国」「平天下」に、"自治"という字を加えたら、今の世の中でも、間違った教えではないのではないかと考えるようになりました。

 ・修身=自分の自治
 ・斉家=家庭・家族の自治
 ・治国=地域の自治
 ・平天下=国の自治

 ということです。
 アメリカの民主主義も、個人から始まっています。個人が責任を持って、自分が家庭での一家族としても機能していくし、近隣のおじさんおばさんたちにもそういう責任を持って、市民として行動をしていくことが求められます。だとすると、『大学』で教えられているこの四つの指標は、日本人の今の生きる道標ではないのかと考えるようになったわけです。
 ただし、それには、"自治"という「自ら治める。責任を持って物事を考え、そして、実行していく」ということ(修身)が大前提になります。
 そして、

 ・家庭にあっては、責任ある一家族の一員となる(斉家)。
 ・地域社会にあっても、やはり責任を持って行動をする。自治の気持ちを忘れない地域人になる(治国)。
 ・これによって、ユナイテッドつまり、地域社会がいくつも連合したり、手を結びあったりするようになっていく(平天下)。

 しつこく言えば、

 ・自分自身、個人の自治を完成させる。
 ・家長が中心になって、家庭の自治を完成する。
 ・そして、家庭の自治を完成したら、その自治の塊が連合をして、地域、地方自治を成り立たせる。小自治の連合が、早く言えば、今の市町村、都道府県という地方自治を完成させる。
 ・そして、地方自治の連合が、日本の国家、日本国を成立させる。

 という順序を踏んでいけばいいのではないか。
 何が言いたいかといえば、『大学』で言っている四つの人間の目標というのは、今こそ、一番大事な日本人の生き方ではないのかな。コロナ禍で経験したおこもり社会の後に続く新しい時代のあり方について示唆を与えてくれるものではないかと考えるのですが、いかがでしょうか? (つづく)

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