平洲塾169 "おこもりぐらし"から学んだこと

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ページ番号1004529  更新日 2023年2月20日

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外出しないで自宅に巣ごもりする、という自粛ぐらしは多くのことを学ばせます。ぼくは今、92歳ですが、まだまだ「至っていないな」と反省改善することがたくさんありました。

そのたびに思い起こすのが、孔子の言った、「過ちては改むるに憚〈はばか〉ることなかれ」という言葉です。『論語』の中にあります。解釈はいろいあろありますが、ぼくはつぎのように受けとめています。

  • 自分の過ちに気づくことが何よりも大切だ。
  • 気づいたら、つぎにその過ちを正そう。
  • そうすれば過ちはチャラになる。
  • そういう状況になったら、何も世間に遠慮ことはない。堂々と生きてよい。

問題は、「誤っているのに、その認識が全くない人間がいることだ」と、孔子は言いたいのでしょう。

ぼくは、今度のコロナウイルス事件で、ぼくの情報吸収が、なかりアバウト(大ざっぱ)であることを知らされました。これは次の段階にくる"長屋の八っあん的短絡的理解"にもつながります。つまり、何でもすぐに「わかった」と反応することです。

戦国時代に智将と言われた小早川隆景が、「すぐ『わかった』という人間に、わかったためしはない」といいました。かれに言わせれば、「真にわかった人間は、必ず発信者に、二度三度と質問する」ということなのです。真理です。

今度のこと(コロナ)では、溢れるほどの情報が媒体を通じてもたらされます。しかし、感染者数ひとつとっても、受け手はそれを受けとるだけです。それが正しいか正しくないかを判断するモノサシを、こっちの側が持っていないからです。

歪んだ心の持ち主の中には、「発表数は操作されている」という人もいます。また、「感染者数は問題ではない。その中の重症者が問題なのだ」と深く掘る人もいます。

ひとりの人間の容量を超える情報過多がそうさせるのです。今度の"おこもりぐらし"で、ぼくは明らかに、「多くの人がお互いを疑うようになった」と思います。

"おこもりぐらし"は"お家〈うち〉主義"でもあるわけですから、『大学(古代中国の教養書)』でいう「修身・斉家・治国・平天下」の、「斉家〈せいか〉=家族が正しくまとまる」のいい機会です。なのに、その成員(家族)が、互いに疑いあっていたら、斉家など粉々になってしまいます。

こんなことを言うと叱られるかも知れませんが、ぼくは数字の発表をいつまでも知事がやっていることに疑問を持っています。それに伴う新しい政策の発表があれば別ですが、単なる数字の発表であるなら、部下に替わらせても誰も文句はいわないでしょう。疾病や伝染病を専管するセクションもあるはずです。その方が却ってマスコミ記者も深堀りの質問ができるでしょう。

都道府県や市町村はこの問題を緊急としつつも、住民のためのルーティンワーク(経営業務)があります。それがつつがなく行なわれているからこそ、トップが数字発表に専念できるのです。ぼくには、ものも言わず、日常業務にコツコツと励んでいる職員たちの苦労の姿が、いつもチラチラします。

東京からお盆に帰省した人の家に、「知事が来ないでくれと言っているのに、なぜ帰ってきたのか? すぐに東京に戻ってくれ」と、家の入口に貼り紙をした事件がありました。テレビその他でも賛否両論でした。

これを見ていてぼくは、各藩の藩境に設けられた関所のことを思い出しました。江戸時代、日本人の国内交通は制約されていました。武術・学問の修行と信仰のため、商売のため等しか移動ができません。それも出発地の役所が出した証明書が必要でした。通行手形です。

それと同じように、

  • 出発時に検査を受けること。
  • 「異常なし」という証明書を出発地の役所で出してもらうこと。
  • 到着地の役所にこれを見せ、「滞在差支えなし」の証明書を出してもらうこと。

などを行なったら、「来るな・帰れ」(この東京険悪風は全国的風潮だと思いますので)の風潮も少しはやわらぐのではないでしょうか。藩の関所(がやっていた仕事)の復活(活用)です。

"おこもりぐらし"は悪いことばかりではありません。"恩への感謝"という美風をかなりよみがえらせました。

「自分は多くの人のお世話になっている」ということの認識です。春の甲子園に続いて夏の甲子園も中止された高校生球児が、交流試合のオープンで皆そう言っていました。"泣いた日もある、恨んだことも"――「高校三年生」の歌通りの経験をした今年の球児の礼の言葉は、その痛みを共有したぼくにも、本当によくわかりました。

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