平洲塾167 東京で働く介護士の嘆き(上)

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ページ番号1004531  更新日 2023年2月20日

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江戸時代、一極集中を続ける江戸を称して、「江戸は諸国(といっても外国はふくまない)のハキダメ(掃き溜め)だ」といい放った人がいます。ハキダメとはゴミ捨て場のことです。その人は江戸に敵意を持って悪口をいったのでしょうが、ぼくはこの悪口を前向きに迎え入れ、むしろ江戸(東京)の特性をある面でいい当てている、と思っています。

生ゴミは焼かれずに積んでおかれると、時間を経ていろいろな現象を生じます。自然発火もあれば、他の要素と交じってエネルギーを生むこともあります。

江戸の活性化は、「江戸以外に生まれた他国人」によって行なわれました。悪口をいった人にいわせれば"諸国のゴミ"です。それが寄り集まり、相乗効果を起こしてパワーを生んだのです。

「三代住まなきゃ、江戸っ子とはいわねぇ」

江戸っ子をそう定義づける江戸っ子がいます。ぼくはナンセンスだと思っています。ぼくの家は三代以上江戸に住み続けています。でもぼくの経験では、江戸に生まれたことを誇り、地方から出てきた人を、「田舎〈いなか〉っぺー」などと蔑称〈べっしょう〉したことはありません。逆に子どものころは江戸っ子であることに身を縮めていました。

たとえば夏休みになると、地方出の親を持つ同級生は、口々に、「田舎に帰るよ」といって帰省します。そして戻ってくると、「ことしはこういう経験をした」と、田舎での体験を夢中になって口からツバを飛ばしながら(マスクなしで)、得意になって話します。これが海・山・川などの異なる里の体験として、自慢話が飛び交います。

田舎のないぼくなどは、耳新しいそういう話に魅せられて、目を輝かせて聞き入りました。やがて語り手がぼくの存在に気づきます。

「おい」と、ぼくの名を呼んで、「おまえ、田舎ないだろう。おまえがいると白けちゃうんだよ。あっちへ行け」といいます。ぼくはもっと話をききたいのですが、語り手を囲む子どもたちも皆田舎に行ってきているので、そろって、(そうだ。あっちへ行け)という目をしています。

ぼくは罪人のように、"あっち(校庭の隅)"へトボトボと移ります。 (つづく)

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