平洲塾98「農業新聞に平洲先生の教え」

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ページ番号1004604  更新日 2023年2月20日

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農業新聞に平洲先生の教え

日本の農業をどうするか

ぼくは現在、全国農業協同組合中央会(全中)で、幹部の研修の顧問のようなことをしています。経営学講座の塾長ですが、年に2回塾長の講義をおこなうほかは、専門の先生方に実際の講義をお願いしています。慶応大学の経営学関係の先生が主として担当してくださいます。そのせいでしょうか、この間農業関係の新聞から、「今後の日本農業はどうあるべきですか、ご意見を伺わせてください」という申し出がありました。ここに書いたような事情なので、「専門外ですので、ご辞退します」とはいいませんでした。それにぼくも今後の日本の農業の振興については、やはり「細井平洲先生の教えを普及すべきだ」という考えを持っていましたから、応じました。そのとき話したのは、いうまでもなく先生の『嚶鳴館遺草』に書かれた、上杉鷹山その他の藩主に対する教えです。先生は遺草の中で、

  • 復興の資源としては、その地域の人間と土以外ありません。
  • その活用には、指導者が「いまは非常のときである」という認識を持つことが大切です。
  • その認識も、行動に移さなければなりません。
  • 行動に移すというのは「平時における生活態度を徹底的に改める」ということです。つまり人びとを指導するうえで、自分が模範を示すのにはやはり「いまは非常のときなので、わたし自身の生活もこのような非常用に改めました」ということを、率先して示すことが必要なのです。

ということに尽きると思います。とくに最近のぼくは、中国や朝鮮などからいろいろな注文をつけられる日本の立場について、かなり思い悩むことがあります。ただぼくは、古代のこれらの国々との関係について、別な考えを持っています。それは、古代の朝鮮は、いわゆる"三国時代"を経験しました。三国というのは高句麗〈こうくり〉・新羅〈しらぎ〉・百済〈くだら〉の国々です。しかしこの三国は、必ずしも独立していたとはいえません。すべて隣国すなわち古代の中国に対する朝貢国だったからです。朝貢国というのは、なかば従属する形で貢物を捧げ、王が「王位と王印」を下付してもらうシステムです。王妃まで認めるか認めないかは、古代中国にその権限がありました。ですから、いまいわゆる韓流ドラマの王国物をみていても、それぞれの国はこの問題で始終悩んでいます。日本ともっとも親しかったのは百済です。仏教を伝来しました。しかしほかの国々も決して日本と無縁ではありません。

日本の国土の特性

三国時代に、これら三つの国はそれぞれ争いました。滅びたり滅ぼされたりしました。滅びた国の民は、かなり大挙して日本に渡ってきました。日本ではこれらの人びとが持っているたとえば農耕に関する先進技術(灌漑〈かんがい〉用水・橋・道路などの建設技術)を、日本のために大いに活用してくれました。日本側でもこれに対応します。たとえば武蔵国〈むさしのくに〉(とくに埼玉県)には、高麗軍と新羅軍という「軍制」を適用しました。二千人単位の同国人が住みつきました。現在でも埼玉県には、その史跡が数多く残っています。

先進技術を持つこれらの国の人びとは、日本のために惜しげもなくその先進技術を実行してくれました。また、日本の政府の財政制度に関与し、「大蔵」というセクションを設けて、協力してくれました。その意味では朝鮮半島で、戦争ばかりつづけてきたこれらの三国も、日本にきてからは日本のために、大いにその知識や技術を活用してくれたといえます。その意味では、これらの先進民族であった三国の人びとに、日本は感謝すべきでしょう。ぼくも素直にそう感じています。しかしここでいいたいのはそういうことではありません。日本にきた三国の人びとは、朝鮮にいたときのように互いに争うなどということを絶対にしませんでした。それはなぜでしょうか。ぼくはひそかに、「それは日本の国土と、日本人の国民性がそうさせたのだ」と思っています。日本に渡ってきた三国の人びとは、日本の土・水・空気・光などに触れた瞬間に、「ああ、なんという平和な土地がこの世界にあったのだろうか」という感じを持ったのに違いありません。国土だけではありません。接する日本人はすべて、しばしばこの欄に書く「恕〈じょ〉の精神」を持っていました。つまり渡ってきた人びとに対し、日本の人びとの、「渡ってきた人びとの苦労を自分のものとして受けとめる」というやさしさと思いやりのきもちを持っていたのです。そういう日本人が住んでいるからこそ土・水・光・空気なども、それを自分たちの身体にしみこませているのです。ですから、日本人と自然が一体となって、これらの傷ついた人びとを迎えたのに違いありません。その意味でもぼくは、「日本という国は、荒々しいきもちを持ってやってきた外国人のきもちをも和らげる力を持っている」と思っています。ぼくはそのことを誇りに思い、「日本の政府も、こういう事実を事実として荒々しくなる国の人びとに、きちんと伝えて欲しいな」と思っています。はっきりいえばいまのゴタゴタの多い世界の中で、日本ほど平和で美しい国土をそのまま保全している国はないと思います。それは人間のことですから、悪い人もときたま出ます。しかし多くの日本人が、コツコツと誠実に、また"恕の精神"を発揮しながら、日々を大切に生きていることは事実です。

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