平洲塾87「尾張宗春の経済成長策(1)」

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ページ番号1004615  更新日 2023年2月20日

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尾張宗春の経済成長策(1)

「嚶鳴フォーラムが、早い時期に市民主導型に変わって欲しい」とぼくが願うのは、前号までに書いたことも含まれています。つまり市民主導によって嚶鳴フォーラムがいとなまれ、そこで交流される各地域の"市民のためによいこと"が浮き彫りになってくれば、今度はそれを受けとめた各地域の市民が、「自分の地域の行政も、こうあって欲しい。どこどこの市の考え方は、わが市の町づくりにも大いに役立つ」というような、自覚と認識を生んでくれば、こんなすばらしいことはないと思うからです。いうところの「市民参加」というのが、形骸的なものではなく、参加の底に市民の温かい血が流れ、そのパワーが大きなエネルギーとして発揮される、と思うからです。それにはいまフォーラムが実行している「各地が生んだ人物の実績」の内容が、出力と入力としてフィードバックされ、距離を超えて参加市だけではなく、それをききつけたほかの地域でも利用され活用される、ということになります。それこそ、「歴史が現代に生かされている」ということになります。つまりそのことが歴史上の人物の存在が、「歴史の輪」になるということなのです。そのためには、場合によってはいま開かれている嚶鳴フォーラムの会で、参加者が情報を公開し、その情報に基づいて、「どこどこの地域に、こういう人物がいます。これは"嚶鳴フォーラム"で検討する価値が十分あります。ぜひ、一度この会にきてもらって話をきこうではありませんか」という提案があってもいい気がします。嚶鳴フォーラムで紹介された人びとを、ぼくがしきりに書いている「歴史の輪」として捉え、そのひとつひとつの環を、フォーラムの場で実際に紹介してもらえれば、わたしたちフォーラム参加者たちの見識がさらに広がり深まると思います。場合によっては、呼ばれて話をしてくれた地域(市など)が、「関心の持てる集まりだ。ぜひ、参加させて欲しい」と申し出るかもしれません。そうなると、嚶鳴フォーラムの輪がさらに広がっていく、ということになるでしょう。そしてこれは夢想主義者のぼくのいうことですから、眉に唾をつけてきいていただきたいのですが、「嚶鳴フォーラムの輪が、行政だけではなく市民の中に大きく波打っていく」という現象が期待できるかもしれません。ぼくは役所からくれた保険証に「後期高齢者」と銘打たれていますから、それほど生命の持ち時間がありませんが、そういう夢はみつづけています。というのは、もうひとつこの「歴史の輪」を広げていくうえで、なぜ市民なのかということについてです。はっきりいえば、「市民のほうが、行政よりもはるかに自由に動ける」ということなのです。活動範囲やその方法も、市民なら自由にできることが、行政の場合にはある程度制約を受ける場合があります。この枠がはずれると、伸び伸びと歴史の輪を結ぶうえで、効力がある気がするのです。その実例を東海市に間近な名古屋市の人物を取り上げてみましょう。

名古屋市は江戸時代、尾張藩の藩都でした。もともとは、徳川家康が「将軍予備軍」を設けるために、御三家を設けました。尾張徳川家・紀伊徳川家・水戸徳川家です。この三家は、徳川家康にすれば、「徳川本家に相続人が絶えたときは、この三家が相談して次期将軍を決めて欲しい」ということだったと思いますが、のちには、「御三家以外、将軍候補者は出せない」ということに変わってしまいました。しかしそれはそれとして、八代将軍徳川吉宗は紀伊(和歌山県)藩主でしたが、尾張徳川家の当主と熾烈〈しれつ〉な争いをして、遂に将軍の座を射止めました。吉宗は、"享保の改革"をおこないました。ぼくは吉宗が「はじめて市民の存在を意識して、政治の対象と考えた」人物だと思っています。しかし吉宗はこのときの争いに懲りました。そこで、「今後は、将軍の座を争うことをやめたい」と考えて、「以後の将軍はすべて自分の子孫としよう」と策し、御三卿(田安・一橋・清水の三家)を設けました。考えようによっては、将軍を自分の子孫に世襲させるという、一種の権勢欲も考えられますが、吉宗には必ずしもそういう考えはなかったと思います。

しかし、吉宗に敗れた尾張徳川家は悔しがりました。なかでも、吉宗と争った人物を兄とする宗春〈むねはる〉という人が、このことをひとつのこだわりの根としました。そのためかどうかわかりませんが、宗春が尾張藩主になった後は、すべて吉宗の改革政策に反対しました。というよりも、もっと積極的に、「吉宗将軍とは逆な政策をおこなう」と策しました。
(つづく)

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