平洲塾91「平洲先生と高山彦九郎のこと(1)」

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ページ番号1004611  更新日 2023年2月20日

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平洲先生と高山彦九郎のこと(1)

ことしの成人式(1月13日)の朝、ぼくにあるラジオ局から「新成人に励ましのことばをさしあげて下さい」という依頼がありました。ぼくは「自分にまなびなさい」と呼びかけました。自分にまなびなさい、というのはつぎのような意味をもっています。

  • 20年も生きてきたのだから、過去の経験のなかに磨けば必ず宝石になるような原石があるはずだ。
  • しかし若さにまかせて新幹線のような生き方をしてきた新成人の多くは、そういう原石を各駅のように黙殺して通りすぎてきた。
  • 成人になったのをひとつのターミナル・ステーションとして、ここで一息入れてそういう各駅をふりかえってみよう。
  • そうすれば、アレ、わたしってこんないい経験をしていたのか、それを見むきもしないで通りすぎてしまったのか、と自分で目をみはるような事例がたくさんみつかるはず。
  • 中には「わたしってけっこうやるじゃない」と、自分でも感心するような例が発見できるはず。
  • たしかにこれからも他に多くをまなばなければいけないけれど、自分の過去をふりかえれば「自分が自分にまなぶ事柄」が必ず発見できるのです。そういう例を探し出して、「おぬし、やるな」と自分に語りかけてみてはどうですか、ということなのです。

もしも「そんな経験はひとつもありません」などと答える新成人がいるなら、ぼくは後期高齢者として、「あなたはいったいどういう生き方をしてきたのですか」と、にくまれぐちをきくでしょう。

自分で自分に感心する生き方をするためには、いつも自分のことばかり考えるのではなく、平洲先生の説くように「相手の立場に立って考える」ことが必要です。上杉鷹山にとって平洲先生の助言が的確であり、効果的だったのは、平洲先生が「わたしが鷹山公の立場に立ったなら」と、いつも鷹山の立場に立って難問に対〈む〉きあっていたからです。こういう考え方が"恕〈じょ〉"の精神なのです。多くの人々がこの精神をもてば、世の中はもっとやさしく温かいものになるでしょうね。

最近、ある本(高山彦九郎の伝記)をよんでいたら、この恕という字をペンネーム(号)にしている学者さんがいたことを発見しました。岡恕斎〈おか・じょさい〉という人物です。京都の学者で高山彦九郎と深い交流がありました。高山彦九郎は多彩な人物で、儒学者ですが単なる学者ではなく、「社会で起こることがすべて教材だ」といっていた実学者です。平洲先生とおなじです。ですから日本各地の多くの学者と接触しましたが、「もっとも影響をうけた人物」として、平洲先生の名をまっさきにあげています。これはぼくにとっても新しい発見でした。

高山彦九郎は群馬県の出身です。同県出身の南朝の忠臣新田義貞〈にった・よしさだ〉を尊敬していました。あるとき京都にいって、三条大橋から御所(皇居)を眺めますと、あまりにも荒れはてていました。橋の上で高山彦九郎は江戸城とくらべて痛憤し、涙を流しました。その悲憤の姿が、現在三条大橋の上に建っています。

かれについては、以上のような印象しかぼくにはありませんでした。ところがある時から高山彦九郎について、どうも頭にひっかかることが起こりました。

東海市の市民の方なら、鈴木淳雄市長の熱心なよびかけで、有志市長さんたちで毎年、"嚶鳴〈おうめい〉フォーラム"、という会合がひらかれているのをごぞんじでしょう。ふるさとの先人を地域づくりに活かす市町の集まりですが、もともとは「細井平洲先生とかかわりをもつ人物を出した自治体」が集まった「平洲サミット」が原点となっています。その平洲サミットの参加市の中に群馬県の太田市長さんがおられました。太田市長さんは「うち〈太田市〉には高山彦九郎さんがおられます」と主張されました。正直にいって、三条大橋事件ていどの知識しかなかったぼくは、そのときは高山彦九郎の存在を、それほど深くはうけとめませんでした。しかし太田市長さんの言葉が頭のヒダにからみついていて、ずっと気になっていたのです。

そして古本屋さんで『高山彦九郎 萩原進 文進社 昭和18年8月発行』という本をみつけ、すぐ買ってむさぼるようによみました。おどろきました。本の中に平洲先生がしきりに登場するのです。高山彦九郎は学問のつきあいをこえて、人間彦九郎が人間平洲先生と親しい交流をしているのです。来月からそのことを書かせていただきます。平洲先生の人間像をさらにひろく、深く勉強したいと思いますので。
(つづく)

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