平洲塾79「『嚶鳴館遺草(おうめいかんいそう)』を復興のテキストに」

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ページ番号1004624  更新日 2023年2月20日

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『嚶鳴館遺草〈おうめいかんいそう〉』を復興のテキストに

2012年に残念なことがありました。それは国際連合が唱えた"国際協同組合年"に応ずる行事がほとんどおこなわれなかったことです。一般国民のほとんどがこのことをしりませんでした。政府も地方自治体も、そしてマスコミも積極的にこのことを伝えなかったからです。

わずかに農業協同組合・生活協同組合・信用組合などの代表が実行委員会をつくって活動しましたが、率直にいえばバトル(局地戦)に終わりました。ウォー(戦争全体)にまで達することはできませんでした。実行委員会の副代表だったぼくにもその理由がよくわかりません。

協同組合の理念は、

  • カネに結びつく組織ではない。
  • 人と人が結びつく組織である。

ということです。19世紀にロンドンでできたモノづくり組合や、ドイツでできたパン屋さんの組合が最初だそうです。しかし日本の関係者は、

  • 天保年間(1830~44)にできた大原幽学〈おおはら・ゆうがく〉の"先祖株組合"
  • 文政年間(1818~30)に二宮金次郎が実行した"報徳仕法〈ほうとくしほう〉"

のほうが早いので、世界の協同組合の祖は日本だ、と主張しています。ぼくが残念だったと考えるのはまずこの事実です。そしてさらにいえれば、

  • 日本の協同組合には"心と心の結びつき"すなわち絆があった。

ということです。

  • その絆は、"恕〈じょ〉の精神"によって固く結ばれていた。

と思うからです。もっといえばこの協同組合の理念は、そのまま「東日本の大震災」の被災地の復興に役立つからです。

あの震災に大きなショックをうけたぼくは、ひたすら被災地の復興を願っています。政府に対しても、

  • ここ数年間はほかのことはしばらく措いて復興に全力を注いでほしい。
  • 外国とのおつきあいも、たとえ多少の不義理をしても「こういう事情なので」と話せば、世界の国々も必ず理解し協力してくれるはずだ(応援参加の国は110か国。阪神大震災の時は62か国)。
  • 世界の国々を感動させたのは日本の互いに対するやさしさと思いやり(恕)の美しい心の実行です。

などを考えました。これはそのまま協同組合の理念の実現です。もしこういうことがおこなわれていれば、日本は国連に対し、「これが日本における協同組合年の実施です」と、胸を張って実行できたでしょう。滅多にない機会でしたので、かえすがえすも残念です。

このことを機会にもう一度、二宮金次郎の"報徳仕法"について勉強しました。金次郎の仕法(やりかた)の根本は「人と土」です。耕す人のもつ徳が、土のもつ徳を掘りおこして協同作業により、ゆたかな農作物をつくり出すのです。

ぼくは前々から「二宮金次郎の考えには、細井平洲先生の影響がある」と思っています。

平洲先生の『嚶鳴館遺草』の冒頭には、「再興の資源は人と土以外にない」とはっきり書かれています。そして、「改革の実行は、"非常の方法"をとるべきだ」といいきっています。"非常の方法"とは、「あたりまえだと考えている現在の生活方法(生きかた)を根本的に改めることだ」と先生は告げているのです。そしてその改革もリーダーが手本を示すべきだ、ともとめます。

ですからぼくが"協同組合の理念"を復興の指針とするなら、「そのテキストに"嚶鳴館遺草"を活用すべきだ」と考えているのです。

さいわいに実行委員会は2013年以降にも存続することになりました。おそらく構成員のだれもが、「どうも中途半端だった」という不完全燃焼のきもちをもっているからでしょう。ぼくも存続委員会になんらかの形で席があれば、改めて先生の「遺草の活用」を提唱するつもりです。

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