平洲塾54「まなんだ人にまなぶ(下)」

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ページ番号1004650  更新日 2023年2月20日

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まなんだ人にまなぶ(下)

そんなある日、平洲先生は門人のひとりからこんな話をききました。それは、「かつて明倫堂の門前で、平洲先生の講義をきいた利助という人が、お金を出して防水工事から逃れようという考えは間違いだ。それよりも、ひとりひとりが鍬〈くわ〉を持って川にいき、一鍬〈ひとくわ〉ずつ川の底を掘れば、それだけ川は深くなり水深も低くなる。自分は、その先頭に立つ、といっております」というものでした。平洲先生はびっくりしました。そして眼を輝かせその門人に、「それはほんとうか?」とききました。門人はほんとうですと答えました。平洲先生は感動しました。自分の話をきいた一市民が、そういう声を立ててくれたことがひどくうれしかったからです。そこで平洲先生は全門人にいいました。
「講義は当分中止する。講義の代わりに全員鍬を持って集まってもらいたい。庄内川にいって、われわれも洪水防止の工事に参加しよう」門人の中にはイヤな顔をする者もいました。それはだれかがいった、「労働の代わりに金を出して勘弁してもらおう」という考えに賛同し、「労働をする時間をお金で買って、平洲先生の講義を受けることにしよう」と考えたからです。この考えには賛成する者もたくさんいました。しかし平洲先生は、「わたしたちとおなじ町に生きる人びとが、鍬を振って苦労しているときに、教場で学問をするわけにはいかない。わたしが教える学問は、世の中の役に立たなければ意味がない。学んだことは必ず実行しよう。みんな、わたしといっしょに庄内川へいこう」と告げて、平洲先生みずからも鍬を担いで庄内川にいきました。
「明倫堂から、学館総裁の細井平洲先生とその門人が、全部工事の手伝いにやってきた」ということをきいて、庄内川の工事に参加していた人びとはいっせいによろこびの声を上げました。そして口々に、「学んだことは必ず実行する、とおっしゃる平洲先生の教えは決してウソではなかった」と、先生を讃え合いました。利助という人物がいった、「ひとりひとりが、一鍬ずつ川の底を掘れば、それだけ深くなって川の水位が落ちる」ということは、決して平洲先生が教えたことではありません。平洲先生の講義をきいた利助が、自分なりに考えて、「一鍬運動」

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