平洲塾12「大ダコと戦った娘の話」

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ページ番号1004696  更新日 2023年2月20日

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美しい日本人たち 「平洲小語」から 第3回

大ダコと戦った娘の話

今回も細井平洲先生の『小語』からのエピソードです。ただし原文そのままでなく、「童門がどううけとめたか」という意味で、内容を多少意訳しています。いままでもおなじです。

平洲先生は出羽〈でわ〉(山形県)の米沢藩上杉家に招かれた学者でしたが、教育面で本校主義(学校のある米沢に学生をあつめる)をとりませんでした。積極的に遠い里に出かけていきました。つまり分校主義です。そのために校舎を建てるわけではありません。「村のお寺や庄屋〈しょうや〉さんの家の庭は広いので、そのまま教場になる」というのが先生の考えでした。そして里では先生が講義するだけでなく、「村人が知っている美しい心の人びとの話」に耳をかたむけました。それも、米沢の人にかぎらず、よその大名家の領地で起こったことでも、よい話なら先生はメモしました。

今回の話もそのひとつで、出羽国の日本海側の鶴岡〈つるおか〉で起こったものです。鶴岡の殿さまは酒井家です。

領内の和佐田村〈わさだむら〉に慶玉〈けいぎょく〉という娘がいました。家は貧しいのですが親孝行で、母親をとても大事にしていました。いっしょけんめい働いて、毎日、母親の好きな食物を買いました。
ある日、母親が、「アワビが食べたい」といいました。慶玉はすぐ海のちかくの魚市場にいきました。市場なら安く買えるからです。ところが市場ではすでにアワビは売り切れていました。残念がる慶玉に市場の人が、「でも海のなかにはたくさんいるよ」とからかいました。これを聞いた慶玉はすぐ着物をぬいで海にとびこみました。
アワビは海底の岩にへばりついて生きています。これをとるにはもぐらなければなりません。慶玉はもぐりました。そして岩についたアワビをとっていると、突然うしろから気味のわるい足にまきつかれました。ふりむくと大きなタコです。慶玉は必死になってタコと戦いました。(タコに負けたらお母さんの好きなアワビがとれない)というつよいきもちが、ついに慶玉を勝たせました。
魚市場では慶玉の勇気と孝心に感動し、タコを高い値でひき取り、明日のためにとってあったアワビをたくさんくれました。

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