平洲塾40「微笑もて正義 をなせ」

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ページ番号1004665  更新日 2023年2月20日

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微笑<びしょう>もて正義<せいぎ>をなせ

前回ご紹介した森銑三〈もりせんぞう 1895~1985、在野の歴史学者、書誌学者〉先生の『伝記走馬燈〈でんきそうまとう〉』に書かれている、細井平洲先生のエピソードをお伝えします。
平洲先生の門人に泉田千弥〈いずみだせんや〉という武士がいました。陸奥〈むつ・福島県〉の相馬氏〈そうまし〉に仕えていました。相馬氏は平将門〈たいらのまさかど〉の子孫といわれる、古い大名家です。泉田は入門するときに、その動機をこう語りました。
「私が先生からまなびたいのは、学問ではありません」
先生はビックリしました。
「では、なんのために私の塾にはいるのですか?」
泉田はつぎのように説明しました。

  • いま相馬藩にわるい家老がいること。
  • この家老は主君をだまして、民を苦しめる悪政をおこなっていること。
  • 良心的な家臣はみんな怒っているが、この家老は藩主が信頼しているため、だれも文句をいえないこと。
  • そこで自分が死をかくごして、藩主を諫〈いさ〉めこの悪家老をのぞこうと思っていること。

「その方法を先生に教えていただきたいのです」泉田はそういいました。そしてこうつけ加えました。
「先生は、単に字句の解釈ではなく、実際に社会に役立つ学問を教えてくださるとききました。ぜひお願いいたします」
平洲先生はじっと考えました。やがてこういいました。
「あなたの藩を思うきもちに感動しました。ぜひご主君をいさめてください。ただし、そのときはだれもきずつけてはいけませんよ」
「は?」
泉田はヘンな顔をしました。平洲先生のことばのイミがよくわからなかったからです。
「どういうことでしょうか?」
平洲先生はつぎのように説明しました。

  • 泉田がおこなうのは"社会正義"の実行でけっしてまちがってはいない。
  • しかし泉田自身が「自分は正しい。殿さまも家老もまちがっている」というきもちをつよくもつと、諫言〈かんげん〉も居丈高〈いたけだか〉になって、殿さまをキメつけようなことばづかいになる。
  • そうなると殿さまはきずつき、せっかくよいことをいっても諫言に耳をかたむけない。
  • そしていままで以上に悪家老を重くもちいるようになる。
  • 泉田は怒って刀をぬき、悪家老をころすようになる。

平洲先生の説明に、泉田は、よくわかりましたとうなずきました。平洲先生は最後にこうつけ加えました。
「泉田さん、正しいことはニコニコ笑いながら実行しましょう」
ちなみに標題(タイトル)は、ぼくの好きな太宰治〈だざいおさむ〉の言葉です。

本のご紹介

細井平洲「小語(しょうご)」注釈
平成7年発行 A5判 345頁 1冊 1,120円(別途送料1冊 350円 650g)
「小語」とは、細井平洲自身が見聞きした君主から名もない人物まで、70人余の逸話が漢文で書きとめられた書物。小野重伃(おのしげよ)氏の研究により完成した、平洲研究の原典となる注釈本。

写真:細井平洲「小語」注釈本

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社会教育課(市役所6階)、文化センター、上野公民館、中央図書館、平洲記念館

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