平洲塾36「感激する友に感激する」

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ページ番号1004669  更新日 2023年2月20日

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感激する友に感激する

この話も平洲先生の『小語(しょうご)』からのものです。いつものようにぼく流に味つけをしてあります。
むかしの人は友人を"益友〈えきゆう〉"と"悪友〈あくゆう〉"に分けていました。益友というのは、「自分にとって得になる人」のことです。得といっても、おカネのことではありません。自分を高める(生涯学習)うえで、まなぶことが多い、というイミです。悪友はその逆です。
細井平洲先生には、益友がたくさんいました。
五味伯有〈ごみ・はくゆう〉や宮川維徳〈みやがわ・いとく〉たちも益友です。
五味伯有は徳川家の家臣・平野遠江守〈ひらのとうとうみのかみ〉のけらいでしたが、ある時、主人にきびしい意見をのべてきらわれ、クビになりました。いさぎよい五味はすぐ自宅に戻ろうとしました。ところがこの日は朝から大雪で、外は雪が深くつもっていました。歩くのは大変です。ふだんから五味を尊敬していた後輩の武士がいいました。
「かごを用意してありますので、どうぞお使い下さい」
五味は首をふりました。
「ご厚意はありがたい。しかしわたしは、きょう、主人から罰をうけた身だ。かごなどとんでもない。歩いて帰ります」そういって五味は雨具を身につけ、ワラジをはくと、玄関前の雪の上にきちんとすわりました。そして奥にむかってていねいに頭をさげ、「殿、きょうまでおせわになりました」とあいさつをして門から去っていきました。
多くの人が見送りました。そしてみんな、「五味様の殿への意見は正しかったのに。おきのどくだ」と話しあいました。
平洲先生は、この五味伯有や宮川維徳と定期的にあつまって、"自分たちの勉強会"をひらいていました。それぞれ門人がいるので「教える立場での勉強会」をひらいていたのです。「教師仲間の相互研修」です。
五味が失業したあともこの勉強会はつづけられました。
その日は古代中国で、主人にきびしい意見をし、それが原因で死んでしまう忠臣の話がテキストになりました。宮川がよみました。途中までよみすすむと、突然、五味が立ちあがり、となりの部屋にいってしまいました。平洲先生と宮川はビックリしました。
「どうしたのだろう?」とマユをよせました。
まもなく五味がもどってきました。ふたりに、「いや、すまない。はずかしいところをみせた。しかし古代中国にもオレとおなじような人物がいたのかと思うと、つい胸がいっぱいになり、涙が出てきたのだ」といいました。
これをきくと、こんどは宮川がたちより涙を目にいっぱいため、「五味さん、あなたはすばらしいよ。あなたのそういう感性にわたしは感動するよ」と五味の手をにぎって、叫ぶようにいいました。
そのふたりの姿を平洲先生は、じっとみつめています。平洲先生はこういっています。
《五味さんに感動する宮川さんにわたしは感動した。わたしのしごとは、こういう感動を多くの人に伝えることだ》
わたしたちのまわりにも、"感動する人"や"感動させる人"はたくさんいますよね。そんな人に出会ったら、その感動をひとりじめにすることなく、ほかの人にも伝えましょう。そういうちいさなことが、いまの世の中をすこしずつよくしていくことにつながると思います。

本のご紹介

細井平洲「小語(しょうご)」注釈
平成7年発行 A5判 345頁 1冊 1,120円(別途送料1冊 350円 650g)
「小語」とは、細井平洲自身が見聞きした君主から名もない人物まで、70人余の逸話が漢文で書きとめられた書物。小野重伃(おのしげよ)氏の研究により完成した、平洲研究の原典となる注釈本。

写真:細井平洲「小語」注釈本

販売窓口

社会教育課(市役所6階)、文化センター、上野公民館、中央図書館、平洲記念館

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