平洲塾29「奇人高山彦九郎も平洲の門人」

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ページ番号1004677  更新日 2023年2月20日

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奇人高山彦九郎も平洲の門人

細井平洲先生にはたくさんの人が学びました。数が多いだけではありません。学ぶ人びとの職業もいろいろと多彩でした。

その中に高山彦九郎〈たかやま・ひこくろう〉という武士がいます。いまの群馬県の出身で、"奇人"と呼ばれました。奇人というのは変わった人という意味ですが、高山彦九郎は熱心な勤王家〈きんのうか〉でした。
かれが生きた時代は寛政〈かんせい〉年間(18世紀)で、ほかにもふたりの奇人がいました。林子平〈はやし・しへい〉と蒲生君平〈がもう・くんぺい〉です。
蒲生君平は高山彦九郎とおなじように熱心な勤王家で、南北朝時代(14世紀)に北朝を立てた足利尊氏〈あしかが・たかうじ〉を逆賊〈ぎゃくぞく〉とののしり、京都にあったその墓を木の棒で叩〈たた〉いたりしました。
林子平は思想家で「江戸の隅田川とロンドンのテームズ川はつながっている。外国が日本を攻めようとすれば、いつでもできる。国防を大切にすべきだ」と主張しました。しかしこれが幕府に憎まれ、「林子平は、徳川幕府の政治を批判している」といわれて罰を受けました。
こういうふつうの人とは違った行動をしたので、三人を"寛政の三奇人"と呼んだのです。

高山彦九郎は細井平洲先生を尊敬していました。平洲先生が上杉鷹山の改革を補佐するために、米沢(山形県)にいったときに、たずねてきて、「ぜひ、門人にしてください」と頼みました。なぜ門人になりたいのか平洲先生はたずねました。彦九郎は、「学問を修めることこそ、自分の改革がおこなえ世の中のために役立つからです」と答えました。平洲先生はこの答えが気に入りました。話してみると彦九郎は、「わたしは日本全国を歩いて、良いことをした人びとを探し出し、文章にして広く伝えたいと思っております」といいました。これも平洲先生は気に入りました。

しかし、あるとき高山彦九郎は自分の縁者が殺されたので、その仇討〈あだう〉ちを思い立ちました。そのことを平洲先生のところにきて話しました。平洲先生は怒りました。そして彦九郎に、「たとえ恩人の仇を討つとはいいながら、仇討ちは人を殺すことだ。そんな小さなことにこだわるようでは、学問の大義〈たいぎ〉を学ぶことはできない。もうおまえはわたしの門人ではない」と告げました。彦九郎はうつむいてしばらく考えました。やがて顔を上げると、「先生、わたくしが間違っていました。改めますからどうか破門はしないでください」と頼みました。平洲先生は、「わかればよいのだ」とゆるしました。

この高山彦九郎が江戸で塾を開いたことがあります。何人かの門人が学びました。その中に貧しい若者がいてあるとき彦九郎にこういいました。
「わたくしは貧しくて先生に月謝を納めることができません。家事使用人として使ってください。それを月謝のかわりにしたいのです」彦九郎はその若者に同情して願いをきき届けました。
ところがある日、その若者がいなくなっていました。そして去るときに彦九郎の大事な本や金品を全部盗んでいってしまいました。彦九郎はつくづく嘆〈なげ〉きました。まわりのほかの門人が、「奉行所に届けましょう」といいましたが彦九郎は首を横に振りました。
「役人の手を煩〈わずら〉わすことは、わ たしの恥を天下にさらすことだ。それよりも、あの男がほかの人びとに被害を与えていないかどうか調べて欲しい」といいました。門人たちは顔をみあわせました。しかし彦九郎の命令どおりあちこちたずね歩きました。かなり被害を受けた家がありました。
彦九郎はその家をたずねては謝罪し、「被害はすべてわたくしが弁償します」といいました。みんなおどろきました。

平洲先生はこの話をきいて微笑〈ほほえ〉みました。
「高山彦九郎はやはり心のある武士だ。さすがわたしをたずねてきたほどのことはある」とよろこびました。

高山彦九郎は自分でいったように、日本中を歩きまわっては良いことをした人びとを探し、その話を熱心にききました。メモをとって文章にし、本にもしました。しかし、もともとかれは勤王家だったので、時の徳川幕府が皇室を尊敬しないといって怒〈いか〉り、ついに遠い九州の久留米〈くるめ〉(福岡県)で自殺してしまいました。平洲先生の門人としては、かなりユニークで行動的な人物でした。

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